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「もうAIは覚えたくない」——40年のキャリアを捨て、早期退職を選ぶ50代エンジニアたちのリアル

2026.06.26 配信
「もうAIは覚えたくない」——40年のキャリアを捨て、早期退職を選ぶ50代エンジニアたちのリアル
Image credit: KRISTV / Scripps

テック業界に30〜40年いたベテランが、AIの導入を機に次々と職場を離れている。転職先を探すでもなく、リスキリングに挑戦するでもなく——「もうやめる」という選択だ。

週60時間の勉強を求められて

テリー・グリム、65歳。40年間にわたってITコンサルタントとして活躍してきた。今年5月、彼は静かに退職した。きっかけは、勤め先がAIツールを全社導入したことだった。

「普通に40時間働いて、さらに20時間を学習と勉強に費やした」とグリムは振り返る。「あとは若い人たちに任せるよ」——それが彼が出した答えだった。

ジェニファー・カーンズ、60歳。GitHubのプログラムマネージャーを先月辞めた。職場でAIの活用を求められたとき、彼女の気持ちはこうだった。「どう使うのかさっぱりわからないし、AIに文章を書かせることには一切興味がない」

ルーク・ミシェル、68歳。ダナ・ファーバーがん研究所でコンテンツストラテジストとして働いていた。デスクトップパブリッシングが登場したとき、インターネットが登場したとき——彼はそのたびに適応してきた。だが今回は違った。「バッテリーの持ちが昔より悪くなった」と彼は言う。早期退職パッケージが提示されたとき、迷わず受け取った。

データで見ると、静かな撤退が続いている

55歳以上の労働参加率(どれだけの人が働いているかを示す指標)は、2026年3月に37.2%と過去最低を記録した。新型コロナ禍のピーク時(2020年5月)でも38.5%だったから、今の水準がいかに低いかがわかる。

ChatGPTを仕事で使ったことがある人の割合を世代別に見ると、18〜29歳では38%なのに対して、50歳以上では18%にとどまる(Pew Research Centerの調査)。「習得できない」のではなく、「習得したくない」という人も少なくない。

MicrosoftはあるソフトウェアエンジニアA(55歳)に対して「退職すれば9ヶ月分の給与を支払う」という早期退職パッケージを提示した。彼は受け取った。LinkedInも600人以上を解雇し、早期退職プログラムを提供した。

「自律性とプロ意識を壊される感覚」

退職者たちが共通して語るのは、お金の問題ではなく「感情の問題」だ。

退職コーチング業界の大手、リタイアメント・コーチズ・アソシエーションの共同創業者ロバート・ローラはこう分析する。「AIは彼らの自律性とプロ意識を根底から壊す。同時に複数の変化が押し寄せてくると、人は退出を選ぶ」

長年の経験が積み上げた「自分のやり方」が、一夜にして「古いやり方」になる。それでも若い社員と同じペースで学び続けろと言われる。精神的にきついのは当然だ。

皮肉な逆転現象

一方で、市場全体を見ると皮肉な動きもある。AIが普及したことで、「経験豊富なシニア社員」の相対的価値が上がりつつある。CEOの40%以上が「今後1〜2年で若手のポジションを削減する」と答えており、入門レベルの職がAIに置き換えられていく流れが加速している。

「ベテランを辞めさせるよりも、ベテランを残したほうが得」という計算になりつつある時代に、当のベテランたちが自ら出て行っている——AI導入の波は、組織の意図を超えた形で人材を動かしていく。

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