参考文献:
あのフォードが、16年ぶりに車の品質ランキングで1位を取った。アメリカの調査会社JDパワーが毎年出している「初期品質調査」で、トヨタやホンダを抑えてトップに立ったのだ。
めでたい話——のはずが、フォード自身が記者会見で語ったのは「やらかした話」だった。
「AI使えばいけるっしょ」が裏目に出た
フォードの副社長チャールズ・プーン氏は、こう打ち明けた。
「AIを入れて設計の基準を調整すれば、いい車ができると思っていた。完全に間違いだった」
フォードは車の設計や製造にAIシステムをどんどん導入していた。「人がやるより速いし正確だろう」と。ところが実際に走らせてみると、品質はむしろ下がった。不具合が続出し、ラインが混乱した。
原因を調べていくと、ひとつの事実に行き着く。何十年もフォードで車を作ってきたベテラン技術者たちの「カン」や「コツ」が、AIにまったく引き継がれていなかったのだ。
クビにした人たちに「戻ってきて」と頭を下げる
で、どうなったか。
フォードは、すでに辞めさせた技術者たちをわざわざ呼び戻した。目的はふたつ。
- AIシステムに「正しい判断の仕方」を教え直してもらうこと
- 経験の浅い若手エンジニアの指導役になってもらうこと
要するに、「AIがあれば人間はいらない」と思ってベテランを手放した結果、AIがまともに動かず、結局その人たちに頭を下げて戻ってもらったということだ。
他人事じゃない「AI入れたから人減らそう」問題
この話、フォードだけの問題じゃない。
いま日本でも「AIで効率化」「DXで人件費削減」という流れは当たり前になっている。でもフォードの失敗が教えてくれるのは、ベテランの頭の中にある知識は、そう簡単にはデータ化できないということだ。
「このネジ、ちょっと締めすぎると3万キロ走ったあたりで異音が出るんだよ」みたいな話は、マニュアルには書いてない。何年も現場にいた人だけが知っている。その人たちがいなくなってから「あれ、AIが変な判断してる」と気づいても遅い。
フォードは最終的に品質1位を取れた。でもそれは「AIのおかげ」ではなく、「人間を呼び戻したから」だ。AIを使いこなすには、まず人間の知識が必要。順番が逆だったという、身もふたもない結論である。