マクドナルドがGoogleと提携し、「ArchIQ」というAIドライブスルーシステムを再導入したというニュースが報じられた。
しかし、この出来事を伝える海外のテックメディア「Futurism(フューチャリズム)」の記事を読むと、奇妙なことに気づく。
彼らは単に事実を伝えているのではなく、AIを嫌悪し、AIの失敗を面白がる読者に向けて、極めて巧妙に「エサ」を撒いているのだ。
「またやらかすぞ」という期待感を煽る構造
初めてFuturismを読む人のために説明すると、この媒体は「AIの進化を礼賛する」タイプのメディアではない。
むしろ、AIが引き起こすトラブルや、テック系CEOたちの滑稽な失敗を冷笑的に報じ、AIに懐疑的な読者へ迎合(パンダー)することでアクセスを稼ぐスタイルを得意としている。
今回のマクドナルドの記事でも、その本質的な意図(嘲笑とクリック誘引)は露骨だ。
記事のタイトルに「Nauseating Foodslop(吐き気をもよおす残飯)」という過激な言葉を使い、過去のIBMとの提携崩壊や、「AIがチキンナゲットを250ドルで注文しようとした事件」などの失敗談をわざわざ丁寧に掘り起こしている。
これはニュース報道の皮を被った、「ほら、あいつらまたやらかすぞ」という読者の期待感を煽るエンターテインメントなのだ。
検証されない「90%自動化」の数字
さらに問題なのは、事実の扱い方である。
記事内では「90%の注文が人間の介入なしで処理されている」というデータが紹介されているが、これはマクドナルド本社の公式発表でも、第三者機関の検証でもない。
あるフランチャイズオーナーがX(旧Twitter)に投稿しただけの数字なのだ。
Futurismはこの未検証のデータをほぼそのまま載せながら、「perhaps finally beggaring belief(信じ難い話だが)」と軽く疑義を挟むだけで、真偽の追及はしない。
嘘か本当かはどうでもいい
構造として最も興味深いのは、フランチャイズオーナーの「従業員がAI導入を求めていた」という発言の引用だ。
記事はこの発言を「明らかに嘘くさいニュアンス」で引用しているが、実際に現場の従業員がどう思っているのかを取材したり、嘘であると証明したりはしない。
ただ読者の心に「どうせ経営者の嘘だろう」という疑念の種を植え付けるだけで終わっているのだ。
AIが仕事を奪うことへの不安。そして、大企業が失敗することへの痛快な感情。
Futurismは、私たちが抱えるそうした「AIに対する負の感情」を正確に読み取り、見事なまでにパッケージ化して販売している。
AIによって自動化されていく世界の中で、人間の「皮肉」や「嘲笑」という感情すらも、メディアにとっては美味しい消費の対象(コンテンツ)になっているようだ。