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たった1つの選挙区に36億円が流れ込んだ——AI企業が「規制する側の人間」を選び始めた

2026.06.26 配信
たった1つの選挙区に36億円が流れ込んだ——AI企業が「規制する側の人間」を選び始めた

ニューヨークのある選挙区に、2400万ドル(約36億円)の政治資金が流れ込んだ。人口75万人ほどの地区の予備選挙に、だ。

何が起きたのか。この選挙区の候補者のひとり、アレックス・ボーレスという州議会議員が「AIの安全規制に賛成」と言った。たったそれだけで、AI企業とその反対勢力が大金を持って殴り込んできた。

「AI規制派を落とせ」に12億円を投じた人たち

ChatGPTを作ったOpenAIの社長や、シリコンバレーの大物投資家たちが「Leading the Future」という政治団体を作り、800万ドル(約12億円)を投入した。目的はひとつ。「AI規制に賛成する候補者を落とすこと」だ。

攻撃の仕方もえげつない。「ボーレスはかつて監視企業Palantirで働いていた。そんな人間がAI規制を語るのは偽善だ」という広告を大量に打った。

一方、AI規制を支持する側にはAnthropicが2000万ドル以上(約30億円)を出した。イーロン・マスクも別の団体経由でお金を動かしている。

オチが秀逸だった

で、結果はどうなったか。

ボーレスは落選した。ここまではOpenAI側の「作戦成功」に見える。

ところが当選したのはマイクル・ラシャーという人物で、この人もボーレスとまったく同じAI安全法案に賛成していた。つまりOpenAI側は12億円かけて「AI規制派」を落としたのに、当選者もAI規制派だったのだ。

ラシャーの勝利コメントが痛快だった。「この選挙区にあんなに必死だったAI企業2社に言っておく。子どもや雇用や環境を守る話で、どっちの言うことも聞くつもりはない」。

本当に怖いのは「次」の選挙

今回の話、笑い話で済ませたいところだが、そうもいかない。

2026年11月のアメリカ中間選挙に向けて、同じことが全国で繰り返される可能性が高い。今回の36億円は「テスト」に過ぎない。

考えてみてほしい。AIを作っている会社が、AIを規制する法律を作る政治家を、お金の力で選べる状態。自分たちの製品にルールを作る側の人間を、自分たちが選ぶ。

これは「AI」の話であると同時に、「民主主義にいくらの値段がつくか」という話でもある。ニューヨークの小さな選挙区では、その値段が36億円だった。

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