参考文献:
2026年2月17日、オクラホマ州クレアモア。市議会が開いたデータセンター建設に関する住民説明会で、地元農家のダレン・ブランチャード氏が意見を述べていた。
持ち時間は3分。彼はそれを数秒超過した。
その直後、2人の警察官がブランチャード氏のもとに歩み寄り、彼を逮捕した。罪名は「不法侵入」。罰金は200ドルだ。
ボディカム映像が語るもの
ブランチャード氏は、自身の逮捕時のボディカム映像を404 Mediaに提供し、公開に踏み切った。
映像には、住民が自分たちの町の将来について発言する場で、発言時間を数秒超えただけで排除される様子が記録されている。住民説明会とは本来、住民が意見を述べるための場のはずだ。その場で「話しすぎた」ことが犯罪になる。
ブランチャード氏はこの罪状を受け入れず、法廷で争う意思を表明している。彼の弁護団は、逮捕時に同席していた市の法務担当が検察側に回ることの利益相反を指摘し、担当検事の忌避申立てを提出した。
「プロジェクト・マスタング」と秘密主義
問題のデータセンター計画は「プロジェクト・マスタング」と呼ばれ、開発企業はBeale Infrastructureだ。
住民の怒りの根底にあるのは、この計画が十分な住民参加なしに承認されたという不信感だ。市の関係者はプロジェクトに関する秘密保持契約(NDA)を締結しており、建設計画の透明な情報開示が行われていないと住民たちは訴えている。
2月の説明会は、住民が反対意見を表明するために設けられた場だった。だが、その場で反対意見を述べた人間が逮捕されたのだ。
全米で広がるデータセンターと住民の衝突
クレアモアの事件は孤立したケースではない。AIブームに伴うデータセンター建設ラッシュは全米各地で住民との衝突を引き起こしている。
バージニア州では、データセンターの天然ガスタービンが発する高周波音が24時間止まらず、住民が窓にマットレスを立てかけて遮音している。ジョージア州では干ばつの中、データセンターの冷却水使用の削減が要請された。ミシガン州では原子力発電式AIデータセンターの建設計画に地元自治体が全面反対を宣言している。
共通するのは、AIインフラの恩恵を受けるのはテック企業であり、騒音、水不足、環境負荷、そして民主的プロセスの形骸化という代償を払うのは地元住民だという構図だ。
ブランチャード氏の逮捕は、その構図の中で最も露骨な形 — 物理的な排除 — が表面化した事例である。3分の持ち時間を数秒超えた農家の男性が、手錠をかけられて連行される。それが2026年のアメリカで、AIのために起きていることだ。