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「AIが作った曲には1円も払わない」——音楽配信サービスが引いた一線

2026.06.30 配信
「AIが作った曲には1円も払わない」——音楽配信サービスが引いた一線
Image credit: 404 Media

あなたがいつも聴いている曲は、もしかすると人間が一切関わっていないかもしれない。そんな時代に、ある音楽配信サービスがはっきりと線を引いた。

Spotifyの競合として知られる音楽配信サービスTidal(タイダル)が、完全にAIで作られた楽曲には印税(再生されるたびに支払われる報酬)を支払わない、と発表したのだ。

きっかけは「実在しないバンド」のヒット

なぜこんな方針が必要になったのか。背景には、AIが生み出した「存在しないアーティスト」たちが、配信サービスで何百万回も再生されているという現実がある。

The Velvet SundownやBreaking Rustといったバンドは、メンバーが実在しないにもかかわらず、Spotifyで数百万回の再生数を叩き出している。聴いているリスナーの多くは、それが人間ではなくAIの作品だと気づいていない。

こうした楽曲は、音楽として味わってもらうというより、再生数を稼いで報酬を得ること自体が目的になっているケースが少なくない。質より量で大量生産される、いわば「使い捨ての音」が配信サービスに押し寄せている。

Tidalの方針と「線引き」の難しさ

Tidalは「私たちが最優先するのは、人間が直接作り、書き、演奏した本物の作品に印税が届くようにすることだ」と表明した。

具体的には、2026年7月15日までに検出ツールを導入し、完全にAIで生成された楽曲を見つけ出して、報酬の対象から外す。ここでいう「完全にAI生成」とは、楽曲のあらゆる要素が生成AIで作られたものを指すという。ただし、そうした曲も配信自体は続け、AI生成だとわかるラベルを付ける方針だ。

つまり、聴くことはできるが稼ぐことはできない、という扱いになる。人間の関与がどこかにあれば対象から外れるため、どこまでをAI製とみなすかという線引きは、実際にはかなり悩ましい問題をはらんでいる。

一方のSpotifyは「共存」を選ぶ

対照的なのが最大手のSpotifyだ。同社もAIによる迷惑な大量投稿にはラベル付けで対抗しているものの、AIコンテンツそのものは引き続き認めている。さらに5月には、音楽大手ユニバーサルとの間で、AIによるカバーやリミックスを可能にする提携まで結んでいる。

排除に動くTidalと、共存の道を探るSpotify。同じ問題に対する正反対の構えが、AI時代の音楽産業の悩みの深さを物語っている。

「誰が作ったか」が問われる時代

突き詰めれば、配信サービスは難しい板挟みに立たされている。音楽の質やアーティストの権利を守ろうとすれば、押し寄せるAI製の楽曲をどこかで止めなければならない。けれど止めすぎれば、新しい表現の芽まで摘んでしまいかねない。

リスナーである私たちにとっても、これは他人事ではない。いい曲だと思って何度も再生したその報酬が、人間の作り手に届くのか、それともAIに曲を量産させた誰かの懐に入るのか。Tidalの一線は、音楽を「誰が作ったか」という問いを、改めて私たちに突きつけている。

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