ドラマの静かなシーンを観ていたら、突然CMが爆音で流れてきて驚いた——そんな経験は誰にでもあるだろう。テレビ放送では2012年の「CALM法」で広告の音量が番組と同じレベルに制限されているが、NetflixやDisney+などのストリーミングサービスは対象外のまま放置されてきた。
それが、ようやく変わる。
7月1日、カリフォルニアで「爆音広告」が違法に
2025年10月にカリフォルニア州のニューサム知事が署名した法案「SB 576」が、2026年7月1日に施行される。内容はシンプルで、動画配信サービスが「広告を、その前後の番組コンテンツよりも大きな音量で流すこと」を禁止するものだ。
テレビの世界ではすでに当たり前のルールだが、ストリーミングには適用されていなかった。この法律でようやく両者の間に公平性が生まれることになる。
配信各社は「すでに対応中」と反論していたが…
この法案に対しては、Netflix・Disney・Amazon Prime Video・Paramountが加盟する業界団体「Motion Picture Association」が反対の立場を取っていた。「多くのサービスはすでに広告の音量管理に取り組んでいる」というのがその主張だ。
技術的な事情もある。配信サービスの広告は「サーバーサイド広告挿入」という仕組みで差し込まれており、広告素材ごとにエンコード方式が異なるため音量にばらつきが出やすい。さらに、テレビ・タブレット・スマホとデバイスが多岐にわたるため、すべての環境で音量を揃えるのは容易ではないと各社は説明していた。
しかし視聴者の不満は根深い。テレビ放送でCALM法が施行されて10年以上経った今でも、FCC(連邦通信委員会)には年間1,700件以上の苦情が寄せられている(2024年時点)。テレビですらこの状態なのだから、ストリーミングでの不満はなおさらだろう。
イリノイ州も追随、全米に波及するか
カリフォルニアだけの動きではない。イリノイ州も今月、同様の法案を可決しており、2027年7月1日から施行される。2つの大きな州が動いたことで、全米に広がる可能性が出てきた。
配信各社がカリフォルニア州内のユーザーだけに音量調整を適用するのか、それとも全米のストリームに一括で対応するのかはまだ明らかにされていない。コスト面を考えれば一律対応のほうが合理的ともいえるが、業界団体が法案に反対していた経緯を見ると、一筋縄ではいかないかもしれない。
広告モデルへの移行が進む配信業界にとって、「広告の体験の質」は契約維持に直結する問題になっている。視聴者がリモコンを握りしめて音量ボタンを連打する日々が終わるかどうかは、この法律の実効性にかかっている。