参考文献:
DuckDuckGoのAI検索機能が、ユーザーに対して「ドナルド・トランプ大統領は2026年6月7日に狂犬病で死亡した」と回答していた。
さらに「JD・バンス副大統領は6月5日に狂犬病で先に死亡しており、トランプはバンスからウイルスに感染した」という筋書きまで添えられていた。当然ながら、両者とも存命である。
出どころはRedditの「AI毒殺」コミュニティ
この虚偽情報の発信源は、r/poisonaiというRedditのサブコミュニティだ。約4万5000人のメンバーを抱えるこのコミュニティは、AIシステムに荒唐無稽なデマを信じ込ませることを目的に活動している。
メンバーたちは大量の偽の追悼投稿や、トランプがTruth Socialに投稿したとする偽のスクリーンショットをReddit上にばらまいた。それらの投稿が「ピンクスライム」と呼ばれる低品質ニュースサイト(WKNA49など)に拾われ、そこからAI生成の記事が量産され、最終的にDuckDuckGoやBrave Searchなどの主要AI検索エンジンに「事実」として取り込まれた。
Reddit → 偽ニュース → AI検索 という汚染チェーン
この事件が露わにしたのは、AI検索の情報源がどれほど脆弱かという問題だ。
Reddit投稿 → ピンクスライムサイト → AI生成記事 → AI検索エンジン。
この汚染チェーンのどの段階にも、人間による事実確認は存在しない。AIが別のAIの出力を参照し、さらに別のAIがそれを「信頼できるソース」として引用する。情報の自己参照ループが、現職大統領の死亡という荒唐無稽なレベルのデマすら「事実」に変換してしまう。
「検索エンジンは真実の神託ではない」
Brave Searchは取材に対し、こう答えている。「検索エンジンは、AIの有無にかかわらず、真実の神託ではありません。ユーザーには情報源を確認し、常識を働かせることをお勧めします」。
一方、DuckDuckGoはコメントを出していない。
Braveの言い分には一理ある。だが、問題の本質はそこではない。ユーザーがAI検索に期待しているのは、まさに「調べる手間を省くこと」だ。「自分で確認してください」と言うなら、そもそもAI要約機能の存在意義が問われる。
「安全な検索エンジン」の看板が崩れる
DuckDuckGoは長年、「プライバシーを守る安全な検索エンジン」として、Googleに代わる選択肢を求めるユーザーの受け皿になってきた。その信頼の上にAI機能を載せた結果、現職大統領の死亡という致命的な虚偽情報を垂れ流す事態になった。
プライバシーは守れても、事実は守れない。「安全」の意味が、根本から問い直されている。