1995年に第1作が公開されてから31年。世界中で愛されてきた「トイ・ストーリー」シリーズで、カウボーイ人形ウッディの声を担当してきたトム・ハンクスが、AI技術に対する率直な不安を口にした。
録り貯めた声は”素材”になりうる
Entertainment Weeklyのインタビューで、ハンクスはこう語っている。「『トイ・ストーリー』で録音された僕たちの言葉は、すべてデジタルデータとしてどこかに残っている。つまり、やろうと思えば何でも作れてしまう」。バズ・ライトイヤー役のティム・アレンも同席しており、2人はこの可能性を「恐ろしい話だ」と表現した。
現在公開中の「トイ・ストーリー5」は、本人たちが声を吹き込んだ正真正銘の新作である。しかし今後、俳優の関与なしにAIだけで続編が量産される——そんな未来が技術的には可能になりつつある。
観客は慣れてしまうのか?
ハンクスがとりわけ気にかけているのは、観客側の反応だ。「みんなこう言うだろう。『まあAIだけど、それでも観ちゃったよ』って」。つまり、品質よりも”慣れ”が勝ってしまう世界を危惧しているのである。
続編についても彼の姿勢は明確で、「素晴らしい作品でなければ意味がない。タイトルが人気だからと惰性で引き延ばすだけなら、やるべきではない」と釘を刺した。
ハンクス自身もAIと無縁ではない
実はハンクスには、AIにまつわる苦い経験がある。過去にディープフェイク(AIで作られた偽の動画や画像)を使った詐欺に巻き込まれたことがあるのだ。一方で、2024年公開の映画「Here」では、自身の若い頃の姿をAIで再現する技術を承認してもいる。拒絶一辺倒ではなく、使い方次第だという現実的なスタンスがうかがえる。
31年間にわたって声を吹き込んできた俳優の言葉には、単なる技術批判を超えた重みがある。AIが「できること」と「やっていいこと」の境界線を、私たちはまだ引けていない。