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ロンドン市長に拒絶されても、警察はPalantirを手放さない——公安AIの既成事実化

2026.06.26 配信
ロンドン市長に拒絶されても、警察はPalantirを手放さない——公安AIの既成事実化
Image credit: AP via The Guardian

民主的なプロセスがテクノロジーの既成事実に敗れた、ひとつの事例がある。

2026年5月、ロンドン市長サディク・カーンは、ロンドン警察(Metropolitan Police)とPalantirの間で進んでいた5000万ポンド(約100億円)の大型契約を差し止めた。理由は「調達規則の重大かつ明白な違反」——複数の業者を比較検討せず、実質的にPalantirだけを対象に選定を進めていたというものだ。

そして2026年6月、警察はPalantirのAIシステム利用を12ヶ月間延長することが認められた。

「パイロットを継続させろ」という圧力

Palantirは市長の決定に対し、「法的手段に訴える」と通告していた。Timesによると、PalantirはMopac(ロンドン警察・犯罪担当市長室)への書簡で、決定の撤回を求めて訴訟を示唆した。

市長室はその後、「新たな調達プロセスを実施する」ことを条件に、現在のパイロット継続を認めた。建前は「後継業者を選定する間だけ」という位置づけだが、実態は「契約は続く」ということだ。

ロンドン警察のアシスタントコミッショナー、レイチェル・ウィリアムズはこう述べた。「このシステムにより、私たちは初めて組織内の様々なデータを一か所に集め、問題のある行動のパターンをいち早く発見できるようになった。すでに大きな変化をもたらしている」。

何が問題なのか

このAIシステムは「Customer Service Engine」と呼ばれ、警察官の不正行為(misconduct)を検出するために使われている。ロンドン警察の全4万5000人分のデータがすでに取り込まれており、「問題のある可能性がある個人や行動パターン」を自動的に検出する。

コミッショナーのマーク・ローリー氏は演説でこう語った。「今まで見逃されていたパターンを可視化できる。もはや同僚や被害者からの申し出だけに頼る必要はない。先手を打って問題のある個人を特定し、害が発生する前に介入できる」。

警察官の不正を発見する目的は理解できる。だが批判者たちは、同じシステムが「政治的活動家の追跡」や「法的に微妙な形の監視」に転用される可能性を懸念している。また、AIが「問題のある可能性がある」と判定する基準が、警察組織の内部監察部門に透明な形で開示されていない点も問題視されている。

Palantirの広報担当は「市民はPalantirを誇りに思うはずだ」という趣旨の声明を出した。

既成事実という戦略

今回の経緯は、公共機関とテクノロジー企業の関係における典型的なパターンを示している。

まず契約を結ぶ。組織に深く組み込む。やめようとすれば訴訟をちらつかせ、「すでに4万5000人分のデータがある」という現実を盾にする。民主的な手続きが差し止めを命じても、「後継業者を見つけるまでの間」という名目で継続が認められる。

「後継業者」の選定プロセスは12ヶ月かかる。そしてその12ヶ月の間に、Palantirはさらに深くインフラに埋め込まれていく。

市長が止めようとしたシステムは、今も動き続けている。

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