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ガソリン価格をAIがつり上げ?カリフォルニアのドライバーが大手スタンドを集団提訴

ガソリン価格をAIがつり上げ?カリフォルニアのドライバーが大手スタンドを集団提訴
Image: Popular Information

ガソリンを入れるたびに「高すぎないか?」と感じていたカリフォルニアのドライバーたちが、ついに法廷で声を上げた。

その相手は、Walmart、Marathon Petroleum、BP、7-Elevenといった誰もが知る大手チェーンだ。

訴状の核心にあるのは、Kalibrate Fuel Systemsという企業が提供するAI価格設定ソフトウェア。このツールが、競合他社の機密データをもとに自動で価格をつり上げていたという。

「見えない手」の正体

Kalibrate Fuel Pricingは、ガソリンスタンドの電光掲示板やポンプに直接接続し、周辺のライバル店の価格や販売量データをリアルタイムで収集する。そして、そのデータをもとにAIが「最適な」価格を自動算出し、設定まで行う。

同社は自ら「全米トップ10の燃料小売業者のうち8社、トップ20のコンビニチェーンのうち14社」にサービスを提供していると豪語している。

つまり、ドライバーが「あっちのスタンドの方が安いかも」と比較しても、両方のスタンドが同じAIで価格を決めている可能性があるということだ。

1セント上がれば年間1.34億ドル

訴状によれば、Kalibrateを使っているスタンドでは、ガソリンが1ガロンあたり最大22セント、ディーゼルに至っては33セントも高くなっていた。

平均でも6〜30セントの上乗せが確認されている。

カリフォルニア州では、ガソリン価格が1セント上がるだけで、ドライバー全体に年間約1億3400万ドル(約200億円)の追加負担がのしかかる。22セントなら、年間約30億ドル。州民の財布から静かに抜き取られてきた金額は途方もない。

実際、ある店舗では販売量が2.2%減ったにもかかわらず、週あたりの利益は587ドル増加していた。売れなくても儲かる — それがアルゴリズムの力だ。

「共謀」なき共謀

この事件で厄介なのは、従来の価格カルテルのように企業同士が密室で談合しているわけではないという点だ。

各社はただ同じAIソフトを導入しただけ。しかし、そのAIが競合の機密データを共有し、互いの価格を参照しながら値付けをすれば、実質的にはカルテルと同じ効果が生まれる。

Kalibrateには「リストレーション」と呼ばれる機能まで搭載されている。これは、一度下がった価格を市場全体で協調的に元に戻すための仕組みだ。人間が一言も交わさなくても、アルゴリズムが自動的に価格の足並みを揃える。

新法AB 325、初の試金石

今回の訴訟は、カリフォルニア州が2025年に制定し2026年1月に施行されたAB 325のもとで提起された、最初期の訴訟の一つだ。

AB 325は、競合他社のデータを使って「価格を推奨、調整、安定化、設定、またはその他の方法で影響を与える」共通アルゴリズムの使用を禁止する法律である。

現在、全米の半数以上の州で60件を超えるアルゴリズム価格設定に関する法案が審議されている。ガソリンだけの問題ではない。

家賃でも同じ手口

実は、この「アルゴリズム共謀」はガソリン業界だけの話ではない。

米司法省は、不動産テック企業RealPageが同様のAI価格設定ソフトを使い、全米のアパート家賃をつり上げていたとして訴訟を起こしている。その被害額は2023年だけで推定38億ドルだ。

ガソリン、家賃、そして次は何か。生活のあらゆるコストが、人間の知らないところでAIによって「最適化」されていく。

その「最適」が誰にとっての最適なのかは、もう説明するまでもない。