「ロボットが器用になっていく動画を見るたびに、不安になる」
韓国の金属労組(韓国金属労働組合)の組合員が語ったこの言葉は、今の工場労働者が感じているリアルな恐怖を凝縮している。
Atlasが工場に入ってくる
2026年6月、自動車メーカーのヒュンダイで働く7万3000人の工場労働者が、ストライキへの投票を行った。争点の一つは賃金だが、もう一つは「雇用の未来」だ。
ヒュンダイはボストン・ダイナミクスを子会社に持つ。ボストン・ダイナミクスといえば、二足歩行のヒューマノイドロボット「Atlas」で知られるアメリカの企業だ。ヒュンダイはこのAtlasをグループ全体の工場で2万5000台以上導入する計画を立てており、アメリカのジョージア州工場には2028年にも本格展開する予定だという。
日本航空や中国の郵便サービスなど、すでに世界各地でヒューマノイドロボットが実際の業務に使われ始めている。ヒュンダイの現場労働者たちが不安を感じるのは、「絵に描いた餅」ではなく、現実の話として目の前に迫っているからだ。
会社の言い訳と組合の反論
会社側はこう説明する。「ロボットは危険で過酷な作業を担当し、人間の仕事を奪うのではなく補完するものだ」と。
しかし組合はこれを信じていない。「ロボット導入によって雇用ショックが起きる」と反論し、導入計画への発言権を求めている。
賃金面では、1人あたり約380万円(2万7000ドル)のパフォーマンスボーナスを要求。これはヒュンダイの年間利益のおよそ3分の1に相当する金額だ。こうした大きな要求の背景には、景気の良いうちに取れるだけ取っておきたいという思惑もあるが、「雇用が守られるなら多少の賃金は妥協する」という労働者の心理とも重なる。
前回のスト以来、8年ぶり
ヒュンダイで大規模ストが起きたのは2018年以来。8年ぶりの集団行動が、「ロボット恐怖」という新たな文脈で動き出した事実は重い。
AI・ロボット技術の進化はこれからも止まらない。工場の自動化が「雇用を守りながら進む」という楽観論と、「いずれ人間は要らなくなる」という悲観論のどちらが正しいのか——その答えが出るのは、Atlasが実際にラインに並ぶ2028年以降かもしれない。
自動車業界だけの話ではない。「ロボットが器用になる動画」が流れるたびに不安になるのは、製造業の労働者だけではないはずだ。