ワールドカップ開催中のロサンゼルス周辺は、連日の大渋滞に見舞われている。その混雑のさなか、カリフォルニア州イングルウッドの交差点で、赤いWaymo車両がセンターラインを越えて対向車線に進入する様子が撮影された。
Waymoとは、Googleの親会社Alphabet(アルファベット)が運営する自動運転タクシーのサービスだ。人間のドライバーは乗っていない。すべてAIが判断して走行する、いわゆる「ロボタクシー」である。
「なんでWaymoが反対車線にいるんだ?」
この映像を撮影したのは、隣の車線にいたドライバーのキムーン・キムさん。ABC 13の報道によると、Waymo車両は二重線のある交差点で対向車線側にはみ出し、向かってくる車の前をゆっくりと進んでいたという。
キムさんは動画の中でこう声を上げている。「なんでこのWaymoが反対車線にいるんだ?」
その直後、Waymoは突然キムさんの車の前に割り込むようにして正しい車線に戻り、左折レーンへ入っていった。本来であれば最初から左折レーンにいるべきだったのに、なぜか対向車線に入り込んでしまったらしい。人間が運転していたら、即座にクラクションを鳴らされるどころか、警察に通報されてもおかしくない行為だ。
繰り返されるWaymoの「想定外」
問題は、これが初めてではないという点である。
わずか3か月前、ヒューストンでもWaymo車両がHOVレーン(複数人乗車用の優先車線)を逆走する事例が報告されている。ほかにも高速走行中にパトカーに追跡される事件、スクールバスの安全規則を無視した走行、自転車レーンへの侵入など、トラブルが相次いでいる状況だ。
ニューヨーク州では、こうした安全上の懸念からWaymoの事業拡大を阻止する動きが州議会レベルで進んでいる。
Waymo側にコメントを求めた報道機関もあるが、回答は得られていないようである。
渋滞で「バグる」自動運転は信用できるか
今回の件で気になるのは、ワールドカップの渋滞という「普段と違う交通状況」がきっかけになった可能性があることだ。自動運転のAIは、通常パターンの道路環境で訓練されている。大規模イベントによる異常な混雑、臨時の交通規制、いつもと違う人の流れ——こうしたイレギュラーへの対応力は、まだ十分に検証されていない。
人間のドライバーなら「いつもより混んでいるから慎重に走ろう」と判断できる。だが、AIにとって渋滞は単なるデータの異常値にすぎず、結果として対向車線への進入という危険な行動につながった可能性がある。
自動運転が「人間より安全」という主張は、あくまで平常時のデータに基づいたものだ。想定外の状況でセンターラインを越えてしまうシステムに、公道を走る資格があるのか。その問いに対する答えを、Waymoはまだ出していない。