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世界3600件超の気候訴訟が「AIのデータセンター」を狙い撃ち——チリ、アイルランド、米国で何が起きているのか

2026.06.28 配信
世界3600件超の気候訴訟が「AIのデータセンター」を狙い撃ち——チリ、アイルランド、米国で何が起きているのか

AIを動かすために欠かせない「データセンター」が、いま世界各地で法廷に引きずり出されている。

データセンターとは、AIの計算処理を担う巨大なコンピューター施設のことだ。常時冷却が必要で、膨大な電力と水を消費する。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)が2015年以降の気候関連訴訟約3600件を分析したところ、この施設を標的にした裁判が急増していることが明らかになった。

チリでは住民が勝訴、しかし……

2020年、Googleがチリの首都サンティアゴ近郊に巨大データセンターの建設を計画した。これに対して地元住民と市議会が「環境への影響が十分に検討されていない」として提訴し、建設許可の差し止めに成功している。

ただし、勝訴しても状況は楽観できない。チリでは深刻な干ばつが続く中、データセンターの建設ラッシュが止まらず、貴重な湿地帯の水資源が奪われ続けているのが現実だ。

アイルランドは国の電力の5分の1を食い尽くす

ヨーロッパでは、アイルランドが「ホットスポット」として注目されている。同国ではデータセンターがすでに国全体の電力の5分の1以上を消費しているにもかかわらず、政府はさらなる拡大を推進。規制当局(CRU)は大規模電力消費者に対して、あと6年間は化石燃料での稼働を認める方針を打ち出した。

これに反発したのが環境団体だ。Friends of Irish EnvironmentとClientEarthが司法審査を求めて動いている。

マスク氏のxAI、無許可でメタンガス発電——住民の健康を脅かす

アメリカでも各地で訴訟が噴出している。カリフォルニア州ピッツバーグ市ではデータセンターに再生可能エネルギーとリサイクル水の使用を義務づける判断が下された。ジョージア州やペンシルベニア州では、化石燃料インフラの承認をめぐって州の規制当局が提訴されている。

中でも衝撃的なのが、ミシシッピ州のケースである。イーロン・マスク氏率いるxAIが、許可を取らずにポータブル式メタンガス発電機を稼働させ、大気浄化法に違反していたとしてNAACP(全米黒人地位向上協会)が提訴した。周辺は黒人やマイノリティが多く暮らす地域で、健康被害のリスクが指摘されている。ところが米司法省は「同社の事業は経済にとって不可欠」として、この訴訟を阻止しようとしている。AIを守るために住民の健康が後回しにされかねない構図だ。

訴訟が変える「空気」

イギリスでも、バッキンガムシャーの大規模データセンター計画に対して市民団体が提訴。政府が審査プロセスの欠陥を認めたことで訴えは取り下げられたが、開発業者は環境負荷の軽減策を法的拘束力のあるものにせざるを得なくなった。

LSEの共同研究者ジョアナ・セッツァー氏はこう述べている。「エネルギー消費の激しい開発を、再生可能エネルギーで稼働させるよう方向づけるチャンスだ」と。

勝訴しなくても、訴訟を起こすこと自体が企業の透明性を高め、環境対策を前進させる力になる。裁判所が問いかけているのは、AIの進化と地球環境は両立できるのか、という根源的な問題である。

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