15年前に同じ学校にいただけの男性に執着し、AIで「2人の赤ちゃん」まで作り上げた女性がいる。
Futurismが報じたこの事件は、AI画像生成ツールがストーカー行為をどこまでエスカレートさせうるかを、生々しく示している。
交際も妊娠も結婚も、すべて作り話
被害者の男性「ルーク」(仮名)に対するストーキングは、少なくとも15年にわたって続いていた。女性はSNS上で「2011年から交際している」と主張し、妊娠中だと偽り、12月に結婚予定だとまで公言していた。
そしてAI画像生成ツールを手にしたことで、その妄想は「証拠つき」になった。ルークの写真に自分を合成した交際写真、妊娠した自分の画像、さらには2人の間に生まれたとされる「架空の赤ちゃん」の写真まで作成し、Threadsをはじめとする複数のSNSに投稿し続けたのだ。
結婚式の招待状まで実際に送付していたという。
家族の子どもの写真まで使われた
さらに深刻なのは、ルークの妹の子どもたち——息子、姪、甥——の写真が無断で使用されていたことだ。家族はSNS上で自分たちの子どもの写真が見知らぬ女性のアカウントに登場しているのを発見し、「非常に不安で怖い」状態に陥った。
地元のベーカリーには、この「架空の赤ちゃん」のために注文されたケーキの依頼が届いていたことも判明している。存在しない子どものバースデーケーキを実店舗に発注するという行為は、妄想と現実の境界がどこまで崩れていたかを物語っている。
「AIが彼女を最も幸せにした」
ルークの妹は、こうコメントしている。
「AIがこのようなことを可能にすると知ったとき、彼女は最も幸せだったに違いない」
この一言が、事件の本質を突いている。AI以前であれば、いくら妄想を膨らませても「証拠」は作れなかった。写真がなければ、SNSで公開しても「嘘だ」と見抜かれやすい。だがAIによる画像合成は、妄想にビジュアルのリアリティを与えてしまう。
ストーカー対策の前提が変わった
従来のストーカー規制法は、つきまとい、待ち伏せ、執拗な連絡といった「物理的・直接的な接触」を主な取り締まり対象としてきた。だがAIを使った画像合成による嫌がらせは、被害者に直接接触しなくても成立する。
加害者は自宅にいながら「交際の証拠」を量産でき、それをSNSで拡散することで被害者の社会的評判を操作できる。被害者やその家族が気づいたときには、すでに大量のフェイク画像がオンライン上に蓄積されている状態だ。
この事件は極端な例に見えるかもしれないが、構造としては誰にでも起こりうる。元交際相手、職場のトラブル相手、あるいは一方的に好意を持った見知らぬ人物——AIツールがあれば、「あの人と付き合っている」という虚構を映像つきで構築できてしまう時代になったということだ。