「最後の息が尽きるまで戦う」——ミシガン州イプシランティ・タウンシップの行政長官は、そう宣言した。
相手は、ロスアラモス国立研究所、ミシガン大学、そしてOracleが組んで推進する大型AIデータセンター計画だ。
「核兵器研究所」が隣にくる?
ロスアラモス国立研究所といえば、第二次世界大戦中に原爆を開発した施設として知られている。現在も核兵器のシミュレーション研究を手がける、アメリカの国家安全保障の中枢だ。
その研究所と組んで、AIの計算処理基盤を担うデータセンターをミシガン州の住宅地近くに建設しようというのがこの計画の骨子だ。プロジェクトにはOracleのCEO・クレイ・マグーイルク氏も参加しており、OpenAIが推進する「Stargate」プロジェクトとも連動している。州知事グレッチェン・ホイットマー氏は支持を表明している。
しかし、地元の住民はそうは思っていない。
3時間にわたる怒りの公開会議
開催された公開会議は3時間以上続いた。住民から噴出した懸念は多岐にわたった。
- 電気代の上昇:大量の電力を消費するデータセンターが来ると、地元の電力需要が急増し、電気代が上がる
- 水資源の圧迫:冷却のために大量の水を使う施設が稼働すれば、生活用水が不足する恐れがある
- 騒音公害:24時間稼働する冷却設備が出す騒音が、住環境を破壊しかねない
- 核兵器シミュレーション研究:ロスアラモスが関わることで、地域が核関連施設の「延長線上」に置かれるという不安
タウンシップは2025年4月、365日間の給水停止モラトリアムを実施し、データセンターへの水供給が環境に与える影響を調査することを決めた。
大学側は「差別だ」と反訴を示唆
これに対し、ミシガン大学側は強い姿勢で反発した。
給水停止の判断について「違法な差別にあたる」として提訴も辞さない構えを見せたのだ。住民の反対運動を法的手段で押さえ込もうとする動きだといえる。
それでも行政側は引かなかった。「最後の息まで戦う」という言葉の背景には、このような圧力があった。
住民が「NO」と言える間に
AIデータセンターの建設ラッシュが続く中、こうした地域住民との対立は全米各地で起きている。
施設がもたらす雇用や税収を歓迎する自治体がある一方で、電気・水・騒音・安全性といった生活直結の問題を抱える地域では、真っ向から反対する動きも強まっている。
重要なのは、住民が声を上げる機会がまだある段階でのことだ、ということだ。計画が決定し、建設が始まってからでは遅い。ミシガン州の小さなタウンシップの「宣戦布告」は、AIインフラの拡大が生活圏に迫ったとき、住民はどこまで抵抗できるのかを問いかけている。