参考文献:
メールアプリを使っていたら、ある日「サービス終了します」と言われる。しかもその理由が「みんなもうメール読んでないから」——。
仕事用ツールとして人気のNotionが、自社メールアプリ「Notion Mail」を今年9月で終了すると発表した。立ち上げからわずか1年。しかもこれ、Notionが200万人ユーザーのメールサービスを買収してつぶした直後に作ったアプリなのだ。
「受信箱を開いてない人が半分超えました」
Notionの公式発表がなかなか衝撃的だ。
「AIエージェント機能が進化して、メールの管理を丸ごとAIに任せるユーザーが増えた。今ではNotion Mailユーザーの半数以上が、受信箱を一度も開かずにメールを処理している」
どういうことか。AIが勝手にメールを読んで、仕分けして、返信の下書きまで作ってくれる。ユーザーは受信箱を開く必要すらない。そうなると「メールを見るためのアプリ」って、いらなくない?——というのがNotionの結論だ。
買収→サービス終了→新アプリ→また終了の地獄ループ
話はもう少しややこしい。
2024年、Notionは「Skiff」というプライバシー重視のメールサービスを買収した。Skiffには200万人のユーザーがいて、「自分のメールは自分で守る」という思想のもとに暗号化メールを提供していた。
ところがNotionは買収後すぐにSkiffを終了。@skiff.comのアドレスを使っていた人たちは、いきなりメールアドレスを失った。その後、Skiffの技術者を使って「Notion Mail」を新たに立ち上げたが、暗号化機能は搭載されなかった。
そしてそのNotion Mailも、たった1年で終了。Skiffを信じて使っていた人たちからすると、Notionに乗り換えを強制されたあげく、結局何も残らなかったことになる。
使っている人がいま知っておくべきこと
Notion Mailユーザーは以下に注意してほしい。
- メール自体はGmailに残っているので消えない
- ただし下書きや予約送信メールは9月21日までに自分で保存する必要がある
- 医療情報を扱う組織(HIPAA対応が必要なところ)は6月30日までに別サービスへの移行が必須
Notionは「自動ラベル設定はAIエージェントに引き継げます」と案内している。つまり、アプリは消えてもAIによるメール管理は続く仕組みだ。
「メールは自分で読むもの」じゃなくなる日
考えてみると、これはけっこう大きな変化だ。
今まで私たちは、メールアプリを開いて、自分の目で読んで、自分の手で返信していた。それが当たり前だった。でもNotionのデータによると、すでに半数以上のユーザーがその作業をAIに丸投げしている。
自分の受信箱を自分で読む——そんな当たり前のことが、数年後には「古いやり方」になっているかもしれない。便利なのは間違いないが、「自分宛てのメールを自分が読んでない」という状態は、ちょっと立ち止まって考えたくなる話ではある。