電話をかけたら、出たのはAIだった。何を言っても的外れな答えが返ってくる。こちらの問題を理解しない。堂々巡りが続く。そして最終的に、受話器の向こうに向かって「人間!」と叫ぶ。
これは一部の短気な人間の話ではない。米国の成人1001人を対象にしたParloa社の調査によれば、43.9%のアメリカ人がAIチャットボットに「human」「person」と叫んで人間のオペレーターに繋いでもらおうとしている。17%は罵倒語を使って自動応答を打ち切ろうとする。
「3分以内に解決しなければ去る」
数字は明確だ。
- 50%以上の消費者がチャットボットを積極的に回避しようとしている
- 50%以上が自動応答に3分以上待たされたら離脱する
- 25.9%が「こちらの言うことを理解しないボット」を最大の不満に挙げている
- 30.4%がAIによるカスタマーサービスをまったく信頼していない
一方、AIに複雑な問い合わせを任せて大丈夫だと考えている消費者は、わずか13.6%だ。
コスト削減が顧客を削減する
企業がカスタマーサポートにAIを導入する理由は単純で、人間のオペレーターより安いからだ。だが、Parloa社のCMOラタネ・コナント氏はこう警告する。
「消費者の80%がサービスの質がブランドへのロイヤルティに直接影響すると答えている。これは体験設計の担当者にとって警報が鳴るべき数字だ」
消費者が発しているシグナルは「完全な疲弊」だと同氏は言う。聞かない、適応しない、問題を解決しないシステムに対する拒絶反応だ。
コスト削減のためにAIを導入した結果、顧客そのものを失う。人件費を節約したつもりが、売上ごと消えていく。この本末転倒に、どれだけの企業が気づいているのだろうか。
AIへの信頼は回復するのか
Pew Researchの調査では、AIが社会にポジティブな影響を与えると考えるアメリカ人はわずか16%にとどまる。
興味深いのは、同じ調査で「問題の90%を解決できるシステム」なら85%の消費者が受け入れると答えている点だ。つまり、消費者はAIそのものを拒否しているわけではない。「今のAIの出来」を拒否しているのだ。
問題は技術ではなく、導入の仕方にある。準備ができていないAIを、コスト削減を急ぐあまり顧客の前に出してしまう。その結果、技術への不信感が固定化され、本当に使えるAIが登場したときにも受け入れてもらえなくなる。
企業が今やっていることは、将来の信頼を前借りして燃やしているようなものだ。