ある朝、玄関を出たら見覚えのない装置が立っていた——そんな話がバージニア州ロアノークで実際に起きた。
キャット・ヴォーンさんの自宅前、道路と芝生のあいだの細い公共用地(パークウェイ・ストリップと呼ばれる帯状の土地)に、黒い柱のような機器がいつの間にか設置されていたのだ。
通知なし、メールもなし
ヴォーンさんによると、事前の通知は一切なかった。
「郵便物を確認しましたが何も届いていません。メールも来ていないか二重にチェックしました」と、地元テレビ局WSLS 10の取材に答えている。
不審に思って警察に通報したところ、駆けつけた警察官もこの装置が何なのかわからなかったという。自分の街に設置されたものなのに、現場の警官ですら把握していなかったわけだ。
正体は「銃声検知センサー」
調べてみると、この機器はFlock Safety社の「Raven」という音響検知ユニットだった。街中に設置して銃声をリアルタイムで検知し、警察に通報するシステムで、かつて各地で導入されていた「ShotSpotter」と同じ種類の監視技術である。
ロアノーク市議会はこのRavenセンサーを市内に75基設置する計画を承認済みだった。ただし、ヴォーンさんの自宅前はその承認済みリストに含まれていなかったとされる。さらに、正式な展開は7月からの予定だったにもかかわらず、なぜかフライングで設置されていた。
市の警察は「対応中です」とだけコメントしている。
「安全のため」と言われても
銃犯罪の多い地域で、銃声を素早く検知する技術そのものに一定の意義があるのは事実だろう。実際、全米の複数の都市がこの手のシステムを導入している。
ただし今回の問題は、技術の是非ではなくプロセスにある。住民への通知なし、設置場所の事前承認リストとの不一致、予定より前倒しでの設置——どれか一つでも問題だが、三つが重なっている。
しかもこの装置は常時マイクで周囲の音を拾い続けるものだ。銃声以外の音——たとえば会話や生活音——をどう処理しているのか、市は住民に対して十分な説明をしていない。
「安全のためだから」という理由で、通知も同意もなく監視機器が庭先に現れる。そうした状況を当たり前にしてしまえば、次に何が「安全のため」として設置されても、もう誰も驚かなくなるだろう。