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「AIの副作用」を記録するメディア

ニック・ケイヴもカイリーも——豪州ミュージシャンの楽曲が丸ごとAI学習に吸い取られていた

2026.06.28 配信
ニック・ケイヴもカイリーも——豪州ミュージシャンの楽曲が丸ごとAI学習に吸い取られていた

カイリー・ミノーグ、ニック・ケイヴ、パウダーフィンガー、ジミー・バーンズ——オーストラリアを代表するミュージシャンたちの楽曲が、AI学習用のデータセットに無断で大量に取り込まれていたことが明らかになった。

検索ツールで「全曲入り」が発覚

きっかけは、米メディア「The Atlantic」が公開したデータセット検索ツールだ。これを使うと、自分の作品がAI学習用データに含まれているかどうかを調べることができる。

ロックバンド「Something For Kate」のフロントマンであるポール・デンプシーは、検索してみて愕然としたという。バンドの全アルバムに加え、ソロ作品までもが丸ごとデータセットに入っていた。「キャリアを通じてレーベルと交わしてきた契約や交渉が、全部無意味にされている」と彼は語っている。

「ロボットに物語を語らせたいのか」

バーナード・ファニングは、楽曲をAIに食わせて機械的なコンテンツを作ること自体に疑問を呈した。「ロボットに僕たちの物語を語らせ、感情を合成させたいのか? アートの本質は人間の感情を表現することにある。ロボットは生きていないし、経験もしない。ただ集約するだけだ」

元サヴェージ・ガーデンのダレン・ヘイズも、30年分の全録音がデータセットに含まれていることを確認し、Instagramで怒りを爆発させた。「何百時間もかけて血と汗と涙を注いだ音楽が、盗まれてソフトウェアにフライドポテトみたいに放り込まれている」

970万曲と1230万曲の巨大データセット

問題のデータセットは2つある。「Sleeping AI」という研究グループが作成した「Sleeping-DISCO-9M」はYouTubeから970万曲を収集し、歌詞サイトGenius.comから歌詞も取得している。もう一つ、ドイツの「LAION」が構築した「LAION-DISCO-12M」は1230万曲を含む。

ただしThe Atlanticは、データセットに含まれている曲がAI企業の学習に実際に使われたかどうかは確定的ではないと注記している。AI企業が特定の楽曲を学習対象から外している可能性もあるからだ。

業界団体は「一度も交渉に応じていない」

オーストラリアとニュージーランドで12万8000人の会員を抱える音楽ライセンス団体APRA AMCOSのディーン・オームストンCEOは、テック大手の姿勢を批判した。「大手テックプラットフォームは一度も交渉のテーブルについていない。代わりに政府にロビー活動を行い、支払い義務を消し去るための政策案を出してきた」

2025年8月にはオーストラリアの生産性委員会が、AIによる著作物の無断利用を合法化する法改正を提案したが、連邦政府は10月にこれを却下している。いまのところ豪州の知的財産法では、著作物を使う前に許諾と対価の合意が必要とされている。

自分の作品がAIに使われているかもしれないという不安は、もはや「かもしれない」ではなく、検索ひとつで確認できる事実になった。交渉すらされずに吸い取られた楽曲をどう取り戻すのか、法整備は追いついていない。

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