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「EUのルールに合格した顔認証」が誕生——街なかの監視カメラがあなたを見分ける日

2026.06.30 配信
「EUのルールに合格した顔認証」が誕生——街なかの監視カメラがあなたを見分ける日
Image credit: Biometric Update

顔認証と聞くと、ヨーロッパは規制が厳しくて簡単には使えない、というイメージを持つ人が多いだろう。ところが、その「厳しいはずのルール」を逆手にとって、公共空間での顔認証に堂々とお墨付きを得た企業が現れた。

スペインの顔認証企業Herta(ヘルタ)が、EUのAI規制法に沿った形で顔認証技術を展開できることを証明する試験を完了した、と発表したのだ。

「サンドボックス」という名の試験場

今回Hertaが完了させたのは、EU初の「AIサンドボックス」と呼ばれる枠組みだ。サンドボックスは直訳すると「砂場」で、新しい技術を実際の規制に照らしながら安全に試せる、いわば実験スペースのことを指す。

この試験はスペインのデジタル化・AI担当の政府機関が運営し、2025年5月から2026年6月にかけて行われた。対象になったのは、同社の「BioSurveillance」という顔認証ソフトである。

試験を通じて確認されたのは、顔認証がEUのAI規制法を守りながらヨーロッパで使えるという点だった。具体的には、人間による監視、集めるデータを最小限に抑える仕組み、誰がいつ使ったか追跡できる記録、アクセス制限、セキュリティ対策といった安全装置を組み込むことが条件となる。

「禁止」ではなく「条件つき容認」

ここで重要なのは、EUのAI規制法が顔認証を一律に禁止しているわけではない、という事実だ。法律は技術の使い道を「禁止」「高リスク」「容認」の3段階に分けており、すべてを十把一からげに締め出しているわけではない。

Hertaのハビエル・ロドリゲスCEOは、今回の達成を誇らしげに語る。「EU初のAIサンドボックスを完了したことは、Hertaにとって戦略的な節目だ。最高水準の法的・技術的・倫理的な安全策のもとで、ヨーロッパ発の顔認証技術を開発・展開できると示せた」。

たしかに、街なかでリアルタイムに人物を特定する警察利用などには厳しい制限が残る。それでもCEOに言わせれば、これは技術そのものの禁止ではなく、目的や妥当性、運用の仕方を一件ずつ吟味するための必要な監視にすぎない、ということになる。

「ルールを守った監視」は安心なのか

企業側の理屈は筋が通っている。ルールを守り、安全装置を備えた顔認証なら、無秩序な監視よりよほど健全だ、と。たしかにその通りかもしれない。

ただ、ここには考えておきたい点がある。「規制をクリアした」というお墨付きは、裏を返せば、公共空間での顔認証を社会が受け入れる地ならしにもなる。一度ルールに沿った形で導入が始まれば、後は使い道がじわじわと広がっていくのが世の常だ。

買い物に出かけた商店街、駅の改札、イベント会場。そうした日常の風景のなかで、カメラが一人ひとりの顔を見分ける時代が、規制という太鼓判つきで近づいている。禁止されていないことと、安心して暮らせることは、必ずしも同じではない。私たちが問うべきは「合法かどうか」だけでなく、「本当にそこまで見られたいのか」という素朴な感覚のほうかもしれない。

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