フランスの広告祭「カンヌライオンズ」で、Snapが新型AR眼鏡「Snap Specs」をお披露目した。
価格は2,195ドル(約32万円)。約4ヶ月後に発売予定。
試着した記者の感想は、記事タイトルが全てを物語っていた。「LOL」——笑うしかない、という意味だ。
まず重い。とにかく重い
普通の眼鏡の重さは25〜50グラムほど。
Snap Specsの重量は132グラムだ。
記者は約10分間装着した後、「非常に重く、不快で、高価であり、誰かが実際に使っているところを想像できない」と率直に書いている。眼鏡として長時間かけ続けることを前提に設計されているはずが、10分で「不快」と感じさせるのは、製品としてかなり致命的な問題だ。
画像は荒く、頭を動かすと止まる
映像の質にも問題があった。
表示品質が低く、「スマートフォンで見るのと大差ない」というのが記者の評価だ。さらに厄介だったのが、わずかに頭を動かすだけで映像が止まってしまうという制御の問題。現実に重ねてデジタル情報を表示する「AR」眼鏡の場合、顔の動きに追従してこそ意味がある。それが止まるなら、ARとしての機能をほとんど果たしていないことになる。
映像のクリッピング(画像の一部が切れて表示される)も発生していたという。
「これ、スマホで十分じゃないですか?」
記者が装着して感じた最大の疑問はそこだ。
現時点でSnap Specsが提供できる体験は、すでにスマートフォンで代替できる。それを32万円払い、132グラムの重さを顔に乗せてまで実現する必要があるかと問われれば、多くの人が首を横に振るだろう。
さらにプライバシーの問題もある。カメラを内蔵した眼鏡は、周囲の人を無断で撮影できる状態になる。Meta Rayban Smartglassesなど、同様の製品は既存市場にあるが、社会的な「眼鏡カメラへの拒絶感」はまだ根強い。
それでも「4ヶ月後に発売」
問題が明らかなのに、Snapは発売を押し通す姿勢だ。
CEO・イーバン・スピーゲル氏はカンヌに登壇し、製品への自信を示した。ただ、技術が追いついていない段階で高価な製品を市場に出すのは、Snapに限った話ではない。AppleのVision Proも「体験は革新的だが実用には遠い」と言われたまま、現在も改善が続いている状態だ。
32万円のAR眼鏡が「本当に使える」ものになる日は、まだ来ていない。それでも各社がこぞってARグラスを出し続けるのは、「次のスマートフォン」の座を誰よりも早く取りにいきたいからだ。ユーザーはその「人体実験」に付き合わされている、という見方もできる。