2013年、ICEとCBPの監視テクノロジー関連の年間契約額は5000万ドル未満だった。2024年には1億6800万ドルだった。そして2026年、5億1300万ドルに達した。
移民権利団体Mijente、法律団体Just Futures Law、研究グループSurveillance Resistance Labが共同で公表した報告書が、その全貌を明らかにしている。
PalantirとAndurilが圧倒的に増加
今回の急増を主に牽引しているのは2社だ。
Palantir:ICEへの契約額は2025年に8110万ドル、2026年は6月時点で9770万ドルに達している。2011〜2024年の平均は2000万ドル前後だったから、急騰ぶりは明白だ。Palantirは今やICEの捜査情報管理の中核インフラとなっており、「ICEはもはやPalantirなしには機能できない」と研究者たちは言う。
Anduril:国防テクノロジー企業で、AI駆動の監視システム、センサー、ドローン、国境タワーを手がける。2026年に大型契約を獲得した。
他にもLexisNexis、Clearview AI(顔認識)、Cellebrite(携帯端末解析)、Thomson Reuters、RELX(データブローカー)などが名を連ねる。
監視ツールの種類は、想像以上だ
報告書が列挙する個別ツールの多様さは、単なる「国境警備の強化」という言葉では表せない。
Mobile Fortify:顔認識アプリ。ICEの捜査官が街頭で人々の顔をスキャンし、データベースと照合する。移民だけでなく、ICE抗議活動への参加者の顔もスキャンされたと報告されている。
Berla iVe:車のインフォテインメントシステムに接続したiPhoneやiPadからデータを抜き取るツール。
VeriWatch:移民収容者が着用するスマートウォッチ型の追跡デバイス。
Tangles:AIを使い、SNSや金融記録などオンライン上の情報から個人のドシエを自動生成する。
Equifaxも言及されている。信用情報企業として誰もが利用するEquifaxのデータが、ICEに間接的に提供されている可能性を研究者は指摘する。
DHS自身がスタートアップを育てている
この報告書が特に強調するのは、ICEがただのお客さんではないという点だ。
国土安全保障省(DHS)は「Silicon Valley Innovation Partnership」を通じて、有望な監視テクノロジースタートアップに最大200万ドルの資金を提供している。さらに「中小企業技術革新研究(SBIR)」プログラムでは、2004年以来500社に合計8億4500万ドルを投じた。企業を育て、その企業から製品を買う——循環型の監視産業が形成されている。
Andurilは2020年に企業価値約20億ドルの段階でSBIR資金を受け取っていた。「小さなスタートアップ支援」とは言い難い。
「我々は心配すべきだ」
Just Futures Lawのエグゼクティブディレクター、パロミタ・シャー氏はGuardianにこう語った。
「DHS議会からの監視をほとんど受けないまま、実質的な裁量資金を手にしている。DHS自身は権利侵害を気にしない——ただテクノロジーを展開したいだけだ。そしてテック億万長者たちがDHSの予算を掌握し、自社企業に還流させている」。
「Palantirが『合法とは何か』『プライバシーとは何か』を定義するような権力を持つことは、深刻な問題だ」とシャー氏は続ける。
ICEは顔認識データベースの存在を公式に否定している。だが報告書には政府が公開していない部分も多い。「絶対に見えていないものがある。それこそが問題の本質だ——我々は心配すべきだ」とシャー氏は言った。
5億ドルの監視インフラは、移民問題を超えた問いを突きつけている。誰もが利用する信用情報機関のデータが使われ、抗議活動参加者の顔がスキャンされる。その先に何があるかは、まだ見えていない。